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第4回.再雇用を選ばないサラリーマン技術者の卒業の仕方いろいろ

更新日:2020年4月13日

いずれ組織から卒業し、再雇用ではなくて、自立していくための考え方を今一度整理してみましょう。技術者の自立の一つの例、またアナロジーとして、ベンチャー企業の起業と運営の話を少ししましょう。基本的には技術者が経営者として自立する一番わかりやすい方法論がベンチャー起業ということになるからです。

マスコミなどではハイリスク・ハイリターンを狙った独立ベンチャー企業の成功=IPO(株式の市場公開)というパターンの図式が一般的ですが、実は世の中には、その他やり方でベンチャー企業(起業)を成功させるというパターンも数多く存在します。それは、既存の組織(例えば大企業、中堅企業など)とうまく連携するというパターンです。


・個人、小さな組織体の価値とはリスクを最小化してチャンスをとれること

ベンチャー企業の存在価値は小さい組織だからこそ出来ることをやるという発想です。だからこそ既存の企業との差異が明確で連携ができます、すなわち既存の大きな組織体を持つ企業の課題に対する解決策を提供するものとなります。これらの内容と課題を大きな組織内に勤めているとき(サラリーマン時代)に掴んでおくと、組織を卒業したあとに大いに役立ちます。大きな企業体や組織体では、新しい開発業務のような不確定性の高い業務に対応して小回りをきかせるのは苦手です。卒業する前に、既存組織の問題点をつかんでおくこと、これは大きな存在価値=大組織の顧客価値=市場価値=ビジネスチャンスになります。

環境変化のリスクを取りずらい既存組織に対して自分でリスクをとっていける小さな組織体には、大きなビジネスチャンスがあるということにもなります。このことを理解して組織の中でいかに個人として未来に向けて助走するかはそれぞれの個人が決めることになります。これらの考え方、マネジメントの実践はすべて自分自身の卒業から自立へのトレーニングにつながると考えてみると、自分自身をひとつのべンチャー企業とおいて見ると、いろいろなヒントが得られます。


・専門をどう捉える:組織の人に求められる超越し突出すること

過去、20世紀までの日本の企業人に求められていたのは、欧米諸国に追いつけ追い越せというターゲットが決まっているなかでの着実な実行でした。組織体制としては、管理主体のなかではみ出しは許されず、いわゆるリスクはすべて事前に摘み取ることが求められたわけです。

これまでは先が不確定な(たとえば創造性)なかでの思考や行動は求められず、リスクを冒さないように管理するのが、当時のマネジメントとして重要でした。徹底的な過去の数値・統計処理と経験重視のデータベース構築によってきちんと管理がなされ、それが日本の教育体系の基本となってきたのは、当時ではある意味で良いことであったことは否めないところです。このとき、必要とされたのは、創造性よりは勤勉性、規則遵守性、出身大学のブランドと専攻学部・学科などでした。 

今後の企業人や専門家、さらに個人に求められているものはなんでしょうか。それは新事業・新商品へのイノベーションへの貢献であり、そこにおいてこそ価値(=顧客価値、社会価値)が生まれるというものです。

現実の組織のなかで働いているサラリーマンの大多数の人は、組織のなかでその経歴や能力、知識、智恵、経験を見込まれて存在している場合が多いのです。しかし組織が必要とする能力は時間とともに変化していき、いずれは乖離して不要となっていき定年となり、またはその前に不本意ながら組織から離れるのです。この対策として組織を超えて突出するには大きく分けると2つの方向性があります。

① すでに持っている専門知識(スペシャリテイ)の深耕化による突出です。すなわち、自分の得意な専門知識をさらに深くほりさげ、他人の追随を許さないようにしていくことです。特に、その専門が、自分の属する組織の中心的なビジネスやミッションと一致していたり、近かったりする場合にはその手法は組織にとっても有効となるのです。途中で自分の属する組織のミッションとずれはじめていても、組織の枠を超えたプロフェッショナルとして、戦略を描くことも出来ます。

専門知識分野の拡充として、すでに述べたダブル・トリプルメジャー化による突出です。特殊な専門分野と共通的専門分野(たとえば、法務、経理、財務系の会計士、弁理士、弁護士、工学博士と技術士などの資格獲得)や資格を超えたダブル・トリプルメジャー化がその戦略的対応策であるといえます。


・会社を利用して自立することはいくらでも可能だ

まずは顧客候補として基本的にお勧めするのは、会社生活のなかでのノウハウを貴重な体験と思ってくれる人と組織を対象に考えるのがよいと思います。たとえば属している企業・業界を手始めの顧客対象と仮定して考えることが早道です。そこでちゃんと活躍していたなら、辞めても声がかからないわけがありません。フルタイムの組織に継続的に必須のライン業務などは後継者をきちんと育てて、出る幕がないとしても、何らかのアドバイザーとして声ぐらいはかかるでしょう。いくつかの会社を掛け持ちすれば、その専門性はスペシャリストではなく、プロフェッショナルとしての価値をもって再生産されてきます。

[R1] 次のターゲットは、同業者や異分野の企業群です。ある組織で最先端のスキルを手にしたあなたは、異分野の会社にとって大変な宝の山のように見えるでしょう。たしかに、考え方や切り口が違う方法論や発想で仕組みを整理すると、これまでの事業分野では、そんなに変わったものではなくても、異分野では新しいビジネスモデルになります。


・給料をもらいながらビジネススクール以上のスキルを得るチャンス

会社にいながら起業の準備をするには、どうしたらよいかということに触れましょう。まずは、会社内部で新規事業を立ち上げることを起業の疑似経験として真っ先に薦めます。これは、技術者はもちろんのこと、営業でも企画管理部門の人でも可能なことであり、将来独立・企業を志すひとにとっては、絶好の起業経験になります。しかも会社のお金を使ってほとんどリスクなしで、さらに一度うまくいけば、その次は桁違いの資金が動かせます。宇なくいけば会社のなかでの新分野への発言権の確保は確実となります。

これはまさに給料をもらいながらビジネススクール以上のスキルを磨くこととなります。多くの会社の方向がプロダクト・イノベーションへのシフトのなか、会社側も手を上げる人材を必死で探しているのも、まさに追い風で会社側もよろこぶという一石二鳥となります。

筆者自身も、結果的にですが、上記に述べたのさまざまのことを(必要に迫られて)やってきました。すなわち、新規事業を提案、立ち上げにより社内、社外ベンチャー起業経験、さらに分社化などによる新会社の設立、事業部長経験、プロジェクトマネージャー経験も役立っています。また中小企業と一緒に事業を立ち上げたり、商品開発をしたりもし、時々は会社から離れて、客観的に会社や自分を見る機会もありました。このような経験を通して、売り上げ管理、請求、価格交渉、受注管理、文書管理など事業の必要な流れについて、自分でも出来るようにしておくことが、将来に役だっています。

特に顧客との対応としてのマーケティング活動は他人まかせにせず、出来るだけ自分で動いて顧客とのやり取りの勘を身につけることは将来の自立・自律のために大切なポイントとなっています。

(2019年8月5日出川作成)


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長澤 英治
長澤 英治
31. aug. 2019

ベンチャー企業を立ち上げる場合(起業する場合)、その立ち位置が重要になると思います。ここではエッセンスを伝えるために概略が書かれているかと思いますが、それなりに思案する必要があるでしょう。しかしながら、いつまでも思案してばかりいても未来のことはわからないので、”走りながら考える”、または、最近に知ったのですがOODAの考え方で機敏に行動することも重要であると感じています。

”会社を利用して自立する、スキルを研く”というと何かやましい感じを持たれるかもしれませんが、自分のためだとモチベーションをあげて取り組んでいると、結果的に成果があがり会社にもプラスになると思います。要は、気の持ち様や考え方で変われるということかもしれません。

Lik
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